フランス、ブローニュの森で揮毫する機会をいただいた。
森は落葉の時季。黄葉という言葉があるが、まさに黄金色に輝いていた。
森の傍に立った時から澄んだ空気へと変わってゆくのがわかった。
ブローニュの森は、フランス百年戦争の際に多くの樹木が伐採され荒廃した。
その後、長い歳月と歴史を重ね人工の都市林として蘇った。世界で初めての人工林による大規模な公園だ。
この森がモデルとなり、ニューヨークのセントラルパークをはじめ世界中の都市林が造られた。
いわば人間が自然と共存する事を唱えた森林再生のモデルだ。
書を通して日本文化を伝え環境活動を並行して行う私にとって、この森で書をしたためる事は大変光栄な事だ。
森の静謐さの中に包まれていると、いつも清々しい気持ちで在りなさいと教えられる気がする
この日、 「随我心」自分の心のままに、と書かせていただいた。
さてこの森の一画に、 木材とガラスの融合を図った近未来的な建物がある。
ルイ・ヴィトン美術館、フォンダシオン ルイ・ヴィトンだ。
「私たちルイ・ヴィトンは森から生まれた。だから森を守るのだ。」と語るのは、ルイ・ヴィトン5代目当主のパトリック・ ルイ・ヴィトン氏。
森林再生活動や環境問題に力を注ぐルイ・ヴィトン財団がこのブローニュの森に美術館を構える意義は深い。
美術館は、まるでブローニュの森に浮かぶノアの箱舟のようであった。
あなたは森を、環境を守る舟に乗る? 乗らない?
私達の未来を問うているように感じた。